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コラム 「経済寸描」

 この場所は、このホームページの作者とその協力者による「独り言の場」です。 勿論独り言ですから、あくまで個人的な意見であって、それぞれの所属する組織の見解とは異なります。 暇潰し以外の目的では読まないで下さい。

IT革命ってそういうことだったの('02.11.20)
Excelで回帰分析('02.03.29)
ハンバーガーのお値段('98.11.24)
JR料金は逓増制か('98.11.20)
個人による情報発信とボランティア('97.02.04)
中国・長江開発と環境問題('97.01.28)
閏年は景気にプラスか?('96.06.25)


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IT革命ってそういうことだったの

 米国経済が翳って以来、余り使われなくなってしまった「IT革命」ですが、まだまだ期待を寄せる人は多いようです。 もっとも、我が国では「ケイタイ革命」こそが景気回復の担い手と混同されているようで、口には出さないが、革命に犠牲者はつきものとみる向きまであるようですが、それはさておいて。

 先週、ネット通販で買い物をしました。2、3年前まで、見栄でクレジットカードは作っても、買い物は店頭で現金即金買いしかしなかったのですから、大いなる進歩です。
 で、何を買ったかというと、デジカメの望遠域を2倍に広げるテレコンバーターです。
 或るところの掲示板で、テレコンバーターはO社(日本カメラメーカー)のフィルムカメラ用のある機種か、T社(韓国フィルターメーカー)のある機種がいいよと教えられました。 但し、前者は既に生産停止で、国内又は海外のオークションサイトでしか手に入らないとのこと。後者は、米国でネット通販をしているそうです。その後の詳しい成り行きは別の機会に譲るとして、驚いたのは、後者の入手に関してでした。

 金曜日の深夜、苦労しながら英語のホームページから注文を出して、なんと翌週の月曜日には、商品が自宅に配達されていたのでした。確かに25ドルの送料はかかりましたが、それにしても早い。早すぎる。 もし、同じ時間に、国内の企業にインターネット経由でなにかを注文していたら、発送は月曜日になり、どんなに早くても火曜日以前に配達されることは無いでしょう。 勿論梱包も完璧、径7cm×長さ5cmのレンズが、3辺計80cmの箱にいっぱいの緩衝材と共に収まってきました。
 あらためて、IT社会のすごさについて考えさせられました(我ながら単純)。

1) 良い(といわれる)物を入手するのに、国境は無い
 ネット通販がなければ、国内で入手できない(売られていない)品物を手に入れるには、外国に旅行する誰かに頼んで買ってきてもらうか、自分で海外まで買いに出かけるかしか有りませんでした。 今は、自宅で胡座をかいたままで、注文できてしまいます。
 抵抗があるとすれば、相手の信用度がしばしば不確かなこと、品物を手にとって確かめられないことと、英語でしか注文できないことぐらいでしょうか。  それも、安い品物で2、3回取引を繰り返すうちに慣れて、むしろ便利さに味をしめてしまいます。

 今回のように、
 a) 韓国製の商品を、香港企業が米国でネット通販をしているところから、購入する。とか、
 b) 日本で既に生産停止になった商品を、米国のオークションサイトで台湾から購入する(先週第二のネット取引です。こちらは商品到着まで8.5日かかりました)。
というような取引を繰り返していると、果たして、工業製品の生産地と市場と消費地が隣接していなければならない必要性が、どれだけあるのか疑問に思えてきます。
 
2) IT革命は流通革命 ?
 これまでにも、パソコンなどを国内のネット通販で購入したことはありました。 にも関わらず、今回のような衝撃を受けなかったのは、注文してから商品が届くまでにそれなりの、いやしばしばそれなり以上の、時間がかかっていたからです。
 カリフォルニア→東京間で壊れ物を運ぶのに、所要2.5日というのは(土日込みでですよ)、もはや私の想像力の域を超えています。 東京に住んでいてさえ、新宿の大手カメラ屋さんにアクセサリーを買いに行って、「今在庫が無いのでメーカーを調べて、お電話します」といわれた経験を、この秋何度かしているのですから。 時間距離で図った地球は、どんどんラグビーボール型に潰れてきているのでしょうが、そのうち、東京ー札幌や東京ー那覇よりも、東京ーロサンゼルスの方が近くなってしまうのでしょうか。
 
3) 本当の空洞化は
 日本のデジタルカメラは、世界市場の9割のシェアを占めているそうです。確かに、海外のカメラ販売のサイトを見ても、並んでいるのは大半が日本メーカーの物です。
 ところが、特定機種用のアクセサリーなど少量生産品になると、とたんに日本製は少なくなります。 私が今年買ったデジカメのメーカーは、フィルターは付けて欲しくない、コンバージョンレンズは純正のものを使って欲しい、という気からか、全く汎用性のないレンズ径のものを作りました。 しかしユーザーは、フィルターは付けたい、他社製のコンバージョンレンズも使いたいと考えます。そこで、両者を繋ぐアダプターやステップアップリングなどが、求められることになりました。 これを最初に作ったのは、そして2番目に作ったのも、アメリカの会社でした。しばらく遅れて日本のアクセサリーメーカーからも出ましたが。 私も含めて、米国製を購入した人はかなりいたようです。このような商品をすぐに作れるのは、やはり中小企業でしょう。 日本の中小企業は、系列化の囲い込みと、厳しいコスト圧縮競争を生き残ることに懸命な中で、自らニッチ商品を開発する意欲を失ってしまったようです。
 
4) 消費市場の空洞化
 私達の世代と違って、普段英語交じりの歌を歌っている今の若い人たちは、英語のホームページから注文することに余り抵抗は無いでしょう。
 まして、欲しいものがすぐに手に入る、国産のお仕着せ商品をそのまま使っている回りの人たちに、ちょっと優越感を感じることが出来るとなれば、尚更です。 「やっぱり国産品の方が」というこだわりも持ち合わせていません。
 以前は、空洞化といえば製造業のことでした。サービスを生産してその場で客が消費する非製造業では、原則として空洞化は無いと思われていました。 勿論、日本の非製造業に外国企業が参入してくるということはいわれていましたが。
 けれども、ネット通販が更に進むと、この分野でも日本に残されるのは、流通の最終部分、文字通りなんとかの尻尾だけになりかねません。
 

 たかが100ドル余りの買い物を2、3回しただけで、何を大仰なという声が聞こえてきそうです。今日はこのへんに。

(いの '02.11.20記)

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Excelを用いた回帰分析

 2001年の暮れに、多分「電猫」のご利用者の学生さんからでしょうか。
 「たとえば、数年間のデータを用いて消費関数やIS-LM曲線を回帰分析で求めるとか、新聞に書いてあることを、自分でデータをいじって確かめてみるなどといった、単純なことから始めてみたいのだが・・・」というご質問をいただきました。
 ゲストブックでもご返事をしたのですが、同様のお話を時々いただきますのでここにまとめておきます。

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 計量分析専門のツール(ソフト)はいろいろありますが、英語版が多く、値段も日本円で10万程度はするようです。
 初めて回帰分析にトライするというのならEXCELでも十分でしょう。
 初めに一回だけ、[ ツール | アドイン ]で「分析ツール」を呼び込んでおく必要があります。あとは必要なときに、[ ツール | 分析ツ ール ]で「回帰分析」を呼び出します。
 2年半程前に職場で昼休み勉強会をやった時のペーパーが出てきました。Excelで初めて回帰分析をする時の手順の部分を抜き出してあります。参考にしてみてください。

 必要なデータは大体「電猫」からリンクしています。まず、経済学の入門書と突き合わせながら、「電猫」の各項目をクリックしてみてください。
 経済学の教科書に載っているような代表的な統計の出所なら、例えば総務省統計局「ポケット統計情報」(電猫からもリンク)など、ほとんどの統計書や調査報告の(注)にも付いています。
 多少古くなりますが、上に書いた勉強会でサブテキストとして指定した本の一部をリストしておきます。

(いの '02.03.29転載)

 EXCELの一般的な解説から、EXCELその他の代表的なソフトによる統計分析手法の説明まで、トータルに説明している阿部 圭司先生のページが有ります。
 じっくり勉強してみたい方には、「表計算ソフトで統計分析」が参考になるでしょう。

(いの '02.08.07追記)

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ハンバーガーのお値段

 唐突ですが、「BMP」ってご存知ですか。
 えっ、WINDOWS標準の画像フォーマット?
 あー、《ビットマップ》ですね。確かにそれもそうなのですが。

 98年9月現在、北京のハンバーガーショップ"MD"で売られているハンバーガー(大)の値段は19.9元、日本円に換算(9月現在のレートは約1元=17円)して約330円だそうです。 北京在住のガイドに聞いた話ですから、まず確かでしょう。去年上海で見かけたときには19.5元でしたから、多少値上がりしたのでしょうか。 同じ品物が、東京では280円で売られています。皆さんは、これを聞いてどう思われますか。

1.たいして変わらないじゃないか。
2.へー、中国のほうが高いのか。
3.日本のハンバーガーは安い(中国のハンバーガーは高い)んだな。

 でも、ちょっと待ってください。日本が中国に輸出する機械類、中国が日本に輸出する繊維製品や原材料、これらいわゆる貿易財の競争力で決定された為替レートを使って、ハンバーガーの値段を比べることは適当でしょうか。

 発想を転換してみましょう。同じ品物が北京で19.9元、東京では280円なのですから、北京での19.9元と東京での280円は同じ「使いで」がある、同じ価値があるということになります。
つまり19.9元=280円・・・1元=14円という交換レートが成り立ちます。

 「たかが、ハンバーガー1つで、そりゃまた乱暴な」ですって? なるほど。ではこうしましょうか。
 大きなバスケットを用意して、平均的な日本人の1年間の買い物、牛肉も大根も、テレビや乗用車(これらは何分の1づつかですが)も、子供の教育費も、すべてこの中に入れます。 これだけでは片手落ちですから、平均的な中国人の買い物のためにも、もう1つバスケットを用意しましょう。 で、二つのバスケットの中身を一緒にして、ガラガラポンとかき混ぜ、もう一度、二つのバスケットに半分づつ入れ直します。 これで、両方のバスケットの中身は、完全に同じになりました。
 この一方と同じ買い物を東京で、もう一方と同じ買い物を北京ですれば、生活費=家計の最終消費支出に関しての、両国の交換レートを 計測することができます。ま、かなり大雑把な言い方ですが。

 例えば、多国間のGDPや最終消費支出を比較する場合には、このように、比較する項目の中身に見合ったレートを使う必要があります。
 実際、国際機関などでそのための計算が行われており、 OECDのPPP( Purchasing Power Parities = 購買力平価 )もその一つですし、 日本では 経済企画庁がPPPを計算しています。
 また、 米国CIAの「 World Factbook 」(ん、この国名はどっかで聞いたような気がするけど、どんな国だったっけ、というような時に重宝してます) では、各国の経済力をPPP換算して表示しています。

 最初にハンバーガーの話をしましたね。MD社のハンバーガーは世界の主要都市で売られていますが、これは、どんな質の小麦を何g、牛肉を何g、レタスを何g使い、どんな焼き方で作るなどと、 その規格が厳重に作られていて、どこでも同じ物が食べられるのだそうです。つまり、ハンバーガー自身が一つのミニ・バスケットなのですね。 そこで、Big Mac Parity 又は Big Mac Index の登場です。
 世界主要都市の"BIG MAC"の値段は、 "The Economist"誌のホームページで見ることができます。

 なお、このテーマについては、 槙田さんのホームページ、コラム「日本の内外価格差統計」も参考になります。

 *) この文章は、昨年10月に書きかけて頓挫していたものを手直ししました。釜山の中村さん、遅くなってごめんなさい。

(いの '98.11.24記)

 以前、BMPの話を書きましたが、2006年08月10日のASAHI-COM(朝日新聞のホームページ)にこんな記事が載りました。
 スイスの大手金融UBSグループが3年に1度実施している調査によると、世界の主要70都市でビッグマック1個を買うために必要な労働時間は平均35分。日本は10分で世界最短、続いてロサンゼルスが11分、シカゴとマイアミが12分だったそうです。
 統計精度などの調査の信頼性は詳しくわかりませんが、世界一物価が高く(経済的には)暮らしにくい国というかつての日本のイメージは、変わったのでしょうか。ちなみに日本でのビッグマックの価格は一個280円で、95年以降変わっていないそうです。

(いの '06.08.11追記)

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290円+450円=780円? −−− JR料金は逓増制か

 一部大手スーパーの「消費税(分)還元セール」が終わりました。
 テレビで見た限りかなりの盛況だったようで、「入店者数=数割増し、売上げ=数倍増」という店もあったようです。 これが果たして景気にプラスとなるか、一部でいわれるように、反動で更に消費減退となるかどうかは、もう少し様子をみないと判りませんが。 テレビ局のマイクに向かって、「もう一年、去年のコタツで我慢しようと思っていたけど、5%引きと聞いて買ってしまった」と答える人もいました。 これを、無駄遣いと呼ぶかどうかは、本人の意識の問題でしょう。ともあれ、価格に敏感な消費者の意識をついた、経営者のセンスには(名称の是非はさておいて)素直に頭を下げましょう。 残念ながら、すべての経営者がそうというわけではないようですが。

 先日、久しぶりにJR(東日本)青梅線の「御岳」まで出かけました。といっても、関東以外の方には分かりにくいかも知れませんが。
 まず、JR南武線の最寄駅「登戸」から290円払って「立川」まで出ます。ちょっと用を足してから、450円払って「御岳」まで行きました。 その帰り道、また450円払って「立川」まで来たのですが、時間も遅いし、そのまま乗り継いで、「登戸」まで来てしまいました。 で、改札で精算しようとすると、あと330円だというのです。「立川までの切符を持っているのだから、290円の間違いではないか」と聞くと、 「「御岳」から「登戸」までは780円だから、差額を払え」といいます。更に聞くと、「(JRではこんなことはほかにも)沢山ある」とのこと。
 えっ、JR料金って乗れば乗るほど割高になる逓増制だったんですか。

 私鉄(JRって私鉄ですよね)の運賃は、たしか公共料金のはず。
でも、例えば首都圏では、都営地下鉄と営団地下鉄を乗り継いだ場合、後の路線の料金が半額になります。 コストの面からみても、一枚の切符で乗り継ぐほうが、発券費用だけでも安くつくはずです。
 同じ公共料金でも、例えば下水道料金のように、環境問題に対する政策的配慮などから排出量を抑えるため、料金逓増制をとる場合はあるでしょう。 しかし、環境問題の視点からみれば、大量輸送機関はむしろ大いに奨励されるべきでしょう。 現に、トラック輸送を海運に振り替える研究などもされているようです。

 どう考えても、同じJR路線内を直行で乗り継ぐと割高につく、合理的な説明は考えつきません。 パソコンの普及率が2割を超えている今日、「コンピュータに計算させたらそうなった」などという論理では、中学生でも納得させられません。
 それとも、アメリカ資本の鉄道と競争でもさせない限り、5円安い豆腐を求めて1km先のスーパーまで出向く、主婦の感覚は理解していただけないのでしょうか。

 JR首脳陣の皆さん。スーパーの店頭に立てなどとは申しません。
 黒塗りの車ばかりでなく、たまの休みには自分で切符を買って、電車に乗ってみてはいかがですか。車窓からの景色も、一番美しい季節ですし。

(南武線登戸方面から、御岳渓谷に行く人の参考データ)
 立川駅で一旦改札を出てから、目の前の券売機で御岳行きの切符を買う場合、往復30mほど余分に歩くことになります。
 御岳渓谷を歩いて、帰りは沢井駅から乗る場合、立川までは同じ450円ですが、登戸まで直通で買うと690円と割安になります???
 なお、沢井駅は無人駅で出札も改札も無く、自動券売機は階段の途中にありますから、見逃さないでください。

(いの '98.11.20記)

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個人による情報発信とボランティア

 日本海原油流出事故の処理が長引くにつれ、初動対応の問題などいろいろな 意見が出始めています。それにしても、阪神淡路大地震の時といい、今回とい い、ボランティアの活躍が目立ちますね。かつて、我が国には本格的なボラン ティアは育たないといわれ、なんでも欧米をありがたがる人々によって「日本 人」を自己嫌悪する常套テーマとされたこともありましたが、最近はそのよう な声も少なくなりました。これには勿論制度的な整備がなされつつあることな ども背景に挙げられましょうが、筆者としてはやはり、そこそこ衣食足りて心 にゆとりを持てるようになったことの表れとして素直に喜びたいと思います。

 ところで、話はまったく違うのですが、現在日本に個人でホームページを持 っている人はどの位居るのでしょうか。どんなに少なく見積もっても10万人 は下らないでしょう。よくインターネットの世界は「ギブ・アンド・テイク」 で成り立っている、或いは「参加者の善意」で成り立っているといわれます。 まさにボランティアそのものといえるでしょう(横文字で「アンペイド・ワー ク」などと呼ぶ人もいるようです)。インターネット生誕の地アメリカを別に すれば、我が国のインターネット人口の伸びは目覚しいものがあります。勿論 そこから発信される情報の価値は、評価する人によってまちまちでしょうが、 それにしてもなんとかおおよその経済的な価値を知ることはできないものでし ょうか。

 ここではとりあえず、個人のホームページ作成に絡む活動のうち「情報発信」 の部分だけについて考えてみましょう。一つの計算方法は「市場で取り引きさ れていないものの価値は、その生産コストで測る」というものです。ただし、 一つ一つのホームページの作成に実際にどれだけのお金がかかったかを知るの は容易ではないので、つぎのように計算してみてはどうでしょうか。

 いま、個人向けホームページ作成代行サービスの平均的な値段は、一ページ 当たり8千〜1万円というところでしょうか。仮に一人当たりの平均的なペー ジ数を10ページ、年平均4回更新したとすると、一人当たり年間32〜40 万円相当の生産を行っていることになります。10万人では320億円〜40 0億円と計算できます。これはGDPの0.01%弱の規模であり、またこの ほとんどがここ2年ほどの間に始まったものなので、これが計算されていたら GDPの伸びを年率0.004%位は押し上げたのではないか、などという推 測もできそうですね。「ただいま世情をお騒がせ中」のあの「たまごっち」は、 ニュースによればこれまでに数十万個売れたそうで、単価を掛けると十数億円 の売り上げというところらしいですから、これと比べると上の数字の大きさが わかります。

 これを多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれでしょう。けれども、 ホームページ上で無償で提供される情報(大研究論文から我が家の猫の写真、 たまごっちのお墓までさまざまですが)そのものの価値は、それを受け入れる 需要がある以上、これよりはるかに大きいはずだと考えるのですが。

 かつて我が国の平均成長率がまだ数パーセントあった頃、米国のそれは2% 程度でした。しかし、米国社会は数字に表れない多くのボランティアによって 支えられていたのだといいます。今日その関係が数字の上で逆転したように見 えたとしても、この国にボランティアに向かう多くの若者のエネルギーがある 限り、それほど悲観したものでもないのではないでしょうか。

(いの '97.02.04記)

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中国・長江開発と環境問題

 昨日(1月27日)から某民放の「ニュース・ステーション」で、「中国・ 長江物語」がシリーズで放送されています。筆者自身も、昨年秋に遅い夏休み を取ってほぼ同じところを歩いて(?)来たこともあり、懐かしさ半分で見て います(その時の写真はこのホームページの「中国」に掲載しています)。あ れ以来、NHKの長江=揚子江・三峡下りの実況中継があったり、また昨年末 には三峡ダムの第二期工事の入札がなされたこともあって、この地域がマスコ ミで取り上げられる機会もそれまでより大分多かったような気がします。
 ところで、今回の放送を見ながら、昨年暮れの報道でちょっと気になってい たことをまた思い出しました。多少旧聞に属するので、手元には資料がないの ですが、記憶を辿ると概ね次の様なことです。

 一部の新聞紙上での「三峡ダムの入札に関連して、低利の公的融資をつけて 欲しいという日本企業の希望に対し、わが国政府の対応が遅くなったのは、環 境保護の立場からこのダムの建設に反対する動きが有り、これに配慮したため ではないか」と読める記事が目に止まりました。
 確かに、全長数百キロ、琵琶湖よりも大きいとかいわれるダムが出来るので すから、河やその周辺の環境に影響を与えないはずはありません。ただ、環境 の問題は人間と自然が共存して生きていくための知恵の問題であって、環境保 護のために人間の生命さえもが犠牲になっていいわけでは、決してないはずで す。

 もともと、このダムの建設には3つの目的があるといわれています。
 第一に、治水の問題です。テレビの画面などで見ると、普段はゆったりと流 れている様にみえるこの大河も、ひとたび暴れ出すと想像もつかない力で周辺 の人々と、それから勿論自然にも襲いかかります。このため、長江流域では夏 場の大洪水によりほぼ毎年の様に数千から数万人の死者が出ているそうですし、 流域の森林資源などの損害も甚大です。この河の水量を、三峡ダムや重慶の上 流に作られる別のダムによってコントロールしようというのです。
 第二の目的は、中国内陸部の輸送手段の確保です。わが国の二十倍もの面積 に、十倍もの人口が暮らす国です。数え方にもよるのでしょうが、この河の流 域だけで四億人以上、中国人口の約三分の一が住むという説もあります。しか し、道路の整備も内陸部ではあまり、というか殆ど進んでいません。例えば、 この河のもう下流に属する三峡下りの下船地、宜昌から武漢までは有料道路が あるのですが、百数十キロの間にサービスエリアの一つもない、三時間以上も バスで揺られる間たった一つ作りかけで放置されたトイレがあるだけという状 態なのですから、まして内陸部においては・・・インフラ整備も先が長いので す。上海や北京しか見たことのない人は、高層ビルが林立し、片側数車線の道 路が立体交差する様子を見て、「本当だ、中国はいつのまにか日本を追い越し そうだ」と感じるかも知れません。しかし、内陸部の村は「市場経済化したく ても、市場まで何十里」という半孤立状態のところも珍しくないのです。もし 重慶まで一万トンの船が入れることになれば、重慶から日本の港までの直通の 輸送すらも可能になるのですから、国内の輸送手段が改善されるだけでなく、 現在は沿海部に集中している輸出産業を内陸部に立地することも可能になり、 極端な経済的地域格差を解消する一つのきっかけになるかも知れません。
 第三に、慢性的なエネルギー不足への対策です。内陸部の農村に殆どテレビ も洗濯機もないのは、勿論経済的な理由も有るでしょうが(まだクレジットが 確立していない)、薄暗い電球を点けるのがやっとな位しか電気が来ないとい うこともあるようです。他方、内陸部の都市では工場もまた家庭の暖房も露天 掘りの泥炭をどんどん燃やすため、大気汚染は極めて深刻です。また、中国は 昨年石油の輸入国になりましたが、日本海を多量のタンカーが往来し始めたら と考えると、ぞっとする人は今なら少なくないでしょう。勿論、原発十五基分 の発電量といってもこの国の消費するエネルギー全体から見ればごく一部でし かありませんが、それでも代わりに原発十五基を作るよりはできるならクリー ンエネルギーを目指して欲しいもの。
 これらのような狙いの重要さを考えればこそ、中国政府は一部の住民の反対 を押し切ってでも、また百万以上の流域住民を移住させてでも、万里の長城以 来の大事業を進めているのでしょう。

 勿論、だからといって環境をないがしろにしていいといっているわけではあ りません。中国自身も例えば、稀少種の川イルカを保存するため、人工飼育も 含めた研究などをしているようです。
 これだけの大工事になれば、どれほどのアセッスメントを事前に行ったとし ても将来予期せぬ問題が生じる可能性は否定できません。しかし、まがりなり にもこの目で現地の人々の暮らしぶりのほんの一面でも見てきた人間としては、 この工事の成功を祈らずにはいられません。

 エアコンで暖まった部屋でパソコンを打ちつつも、自家用車を持たないこと で自分なりにささやかに環境保護に寄与しているのだ(意志が弱いのでこれか ら先、将来のことは判りませんが)と、ちょっぴり自負している男の独り言で した。

(いの '97.01.28記)

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閏年は景気にプラスか?
−−− 三面等価の原則からチェックすると −−−

 6月18日に経済企画庁からQE(国民所得統計速報)が発表されました。
 新聞各紙によれば、今年1−3月の実質国内総生産は「閏年で消費増となっ たこともあり、年率換算12.7%の高い成長率となった」といいます。これ に関連してK紙は囲み記事で閏年要因の解説を加えたのですが、必ずしも判り やすいものとは言えませんでした。ここでは、経済学の教科書にあるいわゆる 三面等価の原則から、閏年の影響を考えてみましょう。なお、ここでは昨年1 −3月におきた阪神大震災等の影響は、脇に置いておきます。

(1) まず、支出の面から見てみましょう。 国内総支出の約6割を占める家計消費は、確かに閏年には増加し、また休 ・祝日が多いほど増加することが知られています。今年の場合、食料品需要 や光熱水道料等は一日分増加したと考えるのが自然でしょう。また、遊園地 ・飲食業や旅館等々保存のきかないサービス業への支払い=サービス生産も 増加します。少なくともこの分は景気にプラスに作用します。しかし、家賃 は閏年でも変わりませんし、テレビや背広等の耐久財、半耐久財に対する需 要の増加が、生産をどれほど引き上げたかは、これだけでは判断できません。 また、あなたが2月29日に買って食べた牛肉は、倉庫から出してきただけ かもしれません。この場合、消費の増加=在庫の減少となって、生産の増加 にはつながりません。

(2) 次に、生産面から単純な計算をしてみましょう。1−3月90日(平年ベ ース)のうち休日・祭日等を除くと、企業の操業日は概ね60日余り(全日 換算)しかありません。これが1日増えると、1.6%程度の増加になりま す。ひとたび生産が増えれば、仮に消費・投資などの実需に回らなくても在 庫投資にカウントされるので、国内総生産はその分だけ増加します。ところ が、カレンダーを数えてみると、昨年の非操業日数(土・日・祝日及び1月2 、3日と仮定)は29日、今年のそれは32日あり、労働時間の短縮が進み つつあることも考え合わせると、現実の操業日数が昨年より増加したとは、 この面からは考えにくいのです。

(3) それでは、所得の分配面はどうでしょうか。(1)で触れたような一部の個人 業主は収入が増加し、これを消費支出に振り向けたでしょう。しかし、サラ リーマン家庭などでは、会社の売上げ増加がそのまま給料の増加になるわけ ではありません。この場合、消費支出の増加は、貯金を減らすことで埋め合 わせるしかありません。昔から、日本人の貯蓄選好は指摘されており、この 面からも消費支出にブレーキがかかります。もっとも、その分企業の営業余 剰が増加するので、国民経済全体での貯蓄は減るわけではありませんが。

(4) つまるところ、1−3月の国内総生産の増加に占める閏年の影響は、単純 計算ほど大きくはなく、従って4−6月の反動(当然有るが)もこの面に限れ ば心配するほどではないと考えるのが妥当なところでしょうか。

(いの '96.06.25記)


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